第7話「会話の 7:3 の法則」Vol.3

前回:会話スキルを上げるために必要なことは「睡眠」、そして「ネット記事とそのコメント欄を読むこと」だとするカノジョは、身勝手な自慢話や誰かの悪口を延々と喋る相手との会話は、会話であって会話でない、それは「壊話」であると痛烈に批判する。カノジョが導き出す会話に大切な3つのポイント、そしてカノジョの過去に秘められた会話への思いがついに明かされる。

 

 

とある女子:「会話に必要なのは理解力、共感力、そして客観力」

 

相手の話をきちんと理解するために、日々しっかり睡眠をとってアタマの健康を保つこと、相手の意見の真意を冷静に捉え、正しく理性的に分析するために、ネット記事&コメ欄を読むこと。

 

とある女子:「この3つを会話の中で足したり引いたり、かけたり割ったりすることで、その人にしかできない会話が出来るんだよ。そしたら、会話の七三の法則とか会話のさしすせそとか、そんな付け焼刃みたいなものがいかにくだらないかわかると思う」

 

会話に必要なのはテクニックではなく、人間性であり、個性。饒舌だろうが口下手だろうが、その中身が魅力的なら、会話の総量の割合や、とってつけたようなお世辞など邪魔なだけ。

 

カレは寝不足で回転不足な自分のアタマを悔やみ反省しながら、必死にカノジョの言葉をアタマの中で反芻する。

 

しっかり寝ること、そしてネット記事とコメ欄を読むこと。

自分にもできそうな気がする。

 

友人:「寝る子は育つ、って言うけどホントだね」

とある女子:「泣く子は育つ、とも言うんだよ」

友人:「何それ?初めて聞いた」

 

よく泣くことで空腹を感じるため食欲も旺盛になり、疲れてよく眠るようになることから、よく泣く子はよく育つといわれている。

 

とある女子:「オトナも同じ。泣いて成長するんだよ」

カラダを大きくするために子供は泣き、ココロを大きくするためにオトナは泣く。

 

友人:「最近、泣いてないなぁ」

とある女子:「・・・会話ってさ、話すことだけが会話じゃないじゃん」

 

相手の話を聞いている時、自分のしぐさだったり表情や相槌、そして時には相手のために流す涙が言葉になる。

 

ツラかったこと、悲しかったことを話している時、ただただ黙って聞き、そして自分のことのようにそのツラさや悲しみを感じ、溢れ出る涙を相手の頬に見たとき、話している人はきっと、それだけで救われる。

 どんな励ましの言葉や労いの言葉も一筋の涙にはかなわない。

その涙はどんな言葉よりも相手に寄り添い、そして相手を支える。

 

とある女子:「経験者だから、私」

微笑みながらそう話すカノジョのドヤ顔を見て、友人はそのカノジョとのいつかの出来事を思い出していた。

泣きそうな顔でカノジョを見つめる友人。

もう一度、笑みを浮かべるカノジョ。

その笑みには「あの時はありがとう」そう書いてあった。

 

とある女子:「さ、美味しいもの食べに行こう!今日は奢っちゃおうかな」

涙をこらえ、笑顔を見せる友人。

 

寝不足のアタマとココロでここに来たことが正解だったのかどうか、それがわからないのはやはり寝不足のアタマとココロだからなのだろうか。

 

日々の生活の中で、人は会話を繰り返す。

繰り返せばたいていのことは上手くなるのだが、会話は違う。

カレの頭の中にはすでにある言葉が浮かんでいた。

 

そう「人間性」

この言葉だけは絶対忘れちゃいけない。

何かに迷った時はこの言葉を思い出せばきっと大丈夫、そんな気がする。

 

そして、ふとカレは思い出す。

カノジョが思い出せなかった「快い眠りこそは、自然が人間に与えてくれたやさしい、なつかしい看護婦である」の言葉の主は誰だったんだろう。

 

検索画面を見ていたカレの動きが止まる。

検索結果はシェイクスピア。そう、寝不足のカレをここに誘(いざない)うきっかけとなった「ハムレット」の作者である。

こんな僥倖に巡り合えるのもカフェの魅力なのかもしれない。

 

いつしか夕日が差し込み始めた店内で、カレは改めて思い出す。

自分は寝不足だったんだ、と。

 

今日はなによりもまず、帰ってすぐ寝よう。

何も考えずたくさん寝て、しっかりアタマを休めよう。

そうすればきっと明日からまた頑張れる、きっとだ。

 

つづく

 

文・山田孝之 編集・@marony_1008

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