その佇まいだけでココロもカラダも異国へと連れ出してくれる、そんな情緒を醸すカフェ、渋谷『and people udagawa』で、ぼんやりと緑葉を眺めながらカレは悩んでいた。
カレが手にしているのは結婚式の招待状。中学校時代の友人からだ。
仲が良かったその友人とは地元を離れてからほとんど会っていない。
ふと昔を思い出す。いつも一緒だったその友人、そして仲間たち。
しばらく帰ってないし、久しぶりにみんなに会いたいけど・・・そんなことを思いながら出欠の記入を迷っていたその時だった。
友人:「やっぱ、オトコ友達が多いオトコのほうがいいよね?」
後ろの席に座っている女子たちから聞こえてきたその質問にカレは頷き、そしてココロの中で呟いた。
「そんなの当たり前だよ。同性から好かれないオトコはイヤなヤツと昔から相場は決まってる」
友人女子は最近二人のオトコと知り合った。
二人とも明るく楽しく、いい人に思える。
しかし、一点だけ決定的に違うところ。それが・・・
「オトコ友達が多いオトコ」と「オトコ友達が少ないオトコ」
その謎を解き明かすべく集まったのが、カレの後ろの席に座るカノジョたちであった。
カノジョたちの会話を聞きながら、カレはある言葉を思い出していた。
「みんな仲良くしましょう。たくさん友達を作りましょう」
学校の先生も親もそう言っていた。友達が多いのは「正義」なのだ。
今日はデザートでも食べながら、のんびりカノジョたちのおしゃべりに付き合うとしよう。カレは優雅な手つきでデザートメニューを開いた。
とある女子:「いくつか訊いていい?」
カノジョはまるでカウンセラーのように、友人にいくつかの質問を投げかける。
社交性は?見た目は?どんな仕事してる?どんなこと話した?
カレがそのカウンセリングに飽きかけた頃、カノジョから診断結果が伝えられた。
とある女子:「オトコ友達が少ないオトコを選ぶかな、私なら」
・・・えっ!?
予期せぬ展開。
どうやら今日も、カレの目の前には未知なる世界への扉が開かれるようだ
カレはメニュー表を閉じ、即座にコーヒーを選んだ。
カノジョが「オトコ友達が少ないオトコ」を選んだ理由。
それは、カノジョの友人A子にまつわる昔話から始まった。
社会人になって数年後、大学時代のオトコ友達と合コンをしたA子は、そこであるオトコと出会い、恋に落ちる。
そのオトコは関西から転勤で東京にやってきた。
交際は順調かと思われたが、5年が経とうとしていたその時、衝撃の事実が判明する。
とある女子:「そのオトコ、既婚者だったんだよ」
友人:「えっ!!!・・・噓でしょ?だって5年も・・・」
とある女子「5年も付き合っててわからないわけない、って思うでしょ?」
知り合った時から既婚者だったカレは単身赴任で東京へやってきた。
結婚していることさえ隠しておけば、東京では独身一人暮らし。
だったら赴任中だけ付き合えるオンナを探そう、ということで合コンに参加し、A子をゲットしたというわけである。
とある女子:「A子にしてみれば、いつでもそのカレの家に行くことができたし、知り合った時から独身だって言ってたから、まさか既婚者だとは思わなかった、って。そりゃそうだよね、本人だけじゃなくて、大学時代のオトコ友達も既婚者だって教えてくれなかったんだから。それも5年間」
友人:「最っ低!既婚者のオトコはもちろんクズだけど、それを知ってて5年間黙ってた周りのオトコもクズのロクデナシだよ」
とある女子:「だよね。だけど本当に可哀そうなのは・・・」
Vol.2へつづく
文・山田孝之 編集・@marony_1008