第1話「モテるために必要なのは、モテる努力じゃないから」

誰かが言った。

偶然を必然と感じるか、必然を偶然と片付けてしまうか、人生なんてその間にある細い塀の上を歩き続けるようなものだ。追い風や逆風、時には大雪、雷によって人はときどきそのどちらかに落ちる。。。。。

 

さて、カレはどちらに落ちるのか!?

 

カレにとってここから始まる物語は、偶然なのか必然なのか?それは神とカレのココロのみぞ知る。。。。。

 

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とある女子:「モテるために必要なのは、モテる努力じゃないから」

 

週末の昼下がり、渋谷のカフェ『Royal Garden Cafe渋谷』で、とある女子が友人に向かってふいに放った言葉だ。

 

入口左の少し奥まった席でイヤホンをしていたカレの耳に届いたその言葉は、音楽と音楽のはざまにある空白を埋めてなお、溢れ続ける泉のような激しさでカレの意識をさらっていった。

 

無意識に音楽を止め、カレはその言葉の続きを待つ。

 

とある女子:「まずやるべきことは、嫌われない努力。野球に例えると・・・」

街のどこかで微かに響くサイレンの音。

それを合図に「とある女子」の講義が始まった。

 

野球って相手チームより1点でも多く点を取れば勝ちじゃない?

3点取られても4点取れば勝つし、10点取られても11点取れば勝ち。ただ、それって逆にこっちが10点取っても11点取られたら負けってことでもある。

 

ここで、野球でいう得点を「モテポイント」、失点を「嫌われポイント」だとすると、いくらたくさんのモテポイントで大量得点したとしても、それ以上の嫌われポイントによって大量失点していたらモテないわけよ。つまり・・・

 

とある女子:「モテに不思議のモテあり、非モテに不思議の非モテなし、ってことね」

友人:「何それ?」

とある女子「名将、野村克也監督の座右の銘。勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、の恋愛バージョン。勝つ時はたまたま運がよかったとか、偶然みたいなことがあるけど、負ける時はそこに必ず何かしらの負ける理由や原因がある。モテる時もたまたまとか偶然はあるけど、嫌われる時には何かしらの嫌われる要素がそこにはある」

 

友人:「けどさ、仮に失点0だったとして、得点も0だったら、それって意味なくない?嫌われはしないけど、好かれもしないわけでしょ?」

とある女子「考えてみて。0対0のまま9回裏が終わったら、その先どうなる?」

友人:「・・・延長戦?」

とある女子:「正解。延長戦に入って特大ホームラン級のモテポイントで勝負を決めるか、あるいは、ありえないエラーでマイナスポイントを献上して相手を失望させるか」

友人:「なんかドラマチック」

とある女子:「でしょ。だからまずは絶対に失点しないよう日頃からの守備練習がとっても大事。どんなことをしたら女の子に嫌われるか勉強しないと」

友人:「簡単じゃん、そんなの。例えば・・・」

とある女子:「あ!そろそろ行かなきゃ!試合始まっちゃうよ」

カノジョたちはお店を出ていった。

 

気づけばカレはイヤホンを外していた。

カノジョたちの話に耳を傾けていたカレのテーブルには、雲のない西の空に漂う名残り惜しそうな夕焼けの赤さとともに、カノジョたちの宴のような余韻が残り、カレが一番知りたかった「嫌われポイントの詳細」は未解決のままカレの脳裏で迷宮入りしてしまった。

 

カノジョたちが何者だったのか、それはわからない。。。

 

夕暮れ時は黄昏時。

そして、黄昏時は誰そ彼時(たそかれどき)。

 

いにしえの時代、夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると、誰かれとなく「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いに、時は現代、たまたまそのお店にいる時間を共有しただけの人たち。

 

東京ではあまりにありふれたその情景。

なんてことのない一日、たまたま入ったカフェで遭遇した邂逅

 

その日から、カレは外でのイヤホンをやめた。

どこでも自分の世界だけに浸るような習慣をやめ、外で起きている出来事を体感することが自分の人としての可能性を拡げてくれるから、といえばカッコいいが、違う。

 

カレの思いはただ1つ。

「モテたい」のだ。

 

「モテる努力ではなく嫌われない努力」

まずはそこから。

 

以降、カレの属性に「カフェ巡り」という趣味が加わることになった。

カフェでなんとなく繰り広げられる女子たちのリアルな会話には自分を変えてくれるヒントがあるのでは・・・もともとお酒が苦手で甘いものが好きなカレにとって、カフェ巡りを趣味とすることはあるいは必然だったのかもしれない。

 

そして、カレだけが気づいていない事実がここにひとつ。

 

カフェ好きな女子はオトコが思っている以上に多い。

女子が好きなその「カフェ」に詳しくなることが、この先カレに何をもたらすのか、非モテなカレがその時点で気づけるわけもなく。

 

つづく

   

文・山田孝之  編集・白瀧一洋

 

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